きつね色にふっくらと焼きあがったパンを目指しているのに、「なんかちがう・・・。」
そんな疑問にぶつかっていませんか?
パン作りは料理と違って、目分量や感覚でなんとかなるというのとはちょっと違います。
計量に始まり焼きあがるまでのプロセスにおいて、初心者さんが判断しづらく失敗しやすいポイントがいくつかあるんです。
この記事では、約20年間おうちパン作りを続けている筆者が、パン作りにおける失敗例とその原因、見極めのコツを紹介します。
それでも、もし失敗してしまったら・・?ご安心ください。
ちゃんと失敗時の対処法もお伝えします。失敗した生地をうまく生まれ変わらせるリメイクだってできちゃいます。
パン作りは楽しいもの。失敗しないコツを掴めばパン作りが楽しくなりますよ。美味しいパンを焼いて家族を喜ばせましょう!
パンが膨らむ仕組みって?
パンが膨らむ工程としてイメージするのは、「発酵」ではないでしょうか。
ここでは、発酵についてお伝えした後、パンが膨らむための重要なポイントを3つ紹介します。
パンが膨らむのは、生地が発酵をするためです。
発酵とは、イースト菌の活動によって出るガスが生地に入り込んで全体を膨らませることです。その発酵が上手くいくためには、イースト菌の良好な活動が欠かせません。
そのイースト菌の活動に必要なのは
・糖分
・温度
・湿度
です。
「パンは生きている」なんて聞いたことありませんか。つまりイースト菌が元気に活動しやすい環境を整えてあげることが、パンが膨らむための重要なポイントなのです。
パンの香りや旨味を引き出す役割もある発酵は、イースト菌の活動が重要なポイントになっています。
ぜひ仕組みを理解してパン作り成功の第一歩にしましょう。
よくある失敗 4例
1 生地がべたつく
2 発酵時に生地が膨らまない
3 生焼け
4 焼き上がりがカチカチで固い
経験がないと判断が難しいものもありますね。もしかすると、正しく判断できれば失敗じゃない、というものも。
状況を1つずつ紹介していくので、参考にしてくださいね。
1 生地がべたつく
生地がひとかたまりにまとまらず、手指にべたべたとくっつく状態です。
こね始めはグルテンができていないので、べたついても大丈夫ですが、こね始めからまとまってくるまでは多少時間がかかります。
また、あまりにも生地がやわらかく弾力がない状態が続きます。
長時間こねても変化が感じられずべたついてしまう場合は、こねているつもりでも生地に伝わっていないことがあります。こね方を変え、生地を持ち上げてたたきつけてみましょう。
それでも変わらなければ、ほんの少し小麦粉を足してみましょう。
小麦粉を足す際の注意点は、小麦粉を足しすぎると配合が変わり、パン生地がかたくなってしまうこともあるので、注意が必要です。
2 発酵時に生地が膨らまない
発酵時間が経過したのにサイズが変わらず、見た目の変化がない状況です。
この記事ではインスタントドライイーストの使用を想定しています。
イーストの保存状態がよければ、イーストの発酵力がありますが、古かったり保管状態が悪いと、発酵力が弱くなりやすく生地が膨らまない原因になります。
開封したものは、できるだけ空気にふれないよう密閉してから冷蔵保存するのがおすすめです。
イーストは温度変化に敏感なため、冷蔵庫開閉時の温度変化が多い場合は冷凍保存が良いでしょう。開封したものは早めに使い切りましょう。
3 生焼け
中の生地が完全に生、中がつまり気味でねっちりとしています。生焼けかどうかを判断するときは、粗熱が取れた状態で確認してください。
焼きたてのパンの中は、蒸気がこもっているので、切ったときに粘りがでるためです。
見た目で判断するときは、パンの底が白い場合は、焼きが足らず生焼けになっている可能性が高いです。
一度冷めてしまったパンを焼き直すと、水分が飛んでさらに固くなりやすいので、ピザやパングラタンなどにリメイクするのがおすすめです。
4 焼き上がりがカチカチで固い
焼き上がりが固いとは、
・あまり膨らまず、焼く前のサイズと比較すると変化が小さい
・表面をおさえると固い
・パンをちぎると、ふんわりと離れずぽろぽろと崩れる
状態です。
カチカチになったパンでも、揚げパンやガーリックトーストなどにリメイクすると、美味しく食べられますよね。
どういう状態が成功で、失敗すると何が違うのか、判断ができるだけでもパン作りがうまくいきます。
また、原因を知ることは成功への近道です。それぞれの状態と原因、復活できるのかなどの対処法を解説しますのでぜひご覧ください。
失敗パターン別の原因と対処法
前章では、よくある失敗の4例をご紹介しました。当てはまったパターンはありましたか。
ここからはそれぞれの原因と対処法を詳しく解説します。
では、よくある4例をひとつずつ見ていきましょう。
1 生地がべたつく原因と対処法
・「計量のミスや調整」
パン作りの最初の準備として、すべての材料をレシピ通りに計量することはとても重要です。また、材料の密度状態に左右されないよう単位は重量を記してあるレシピがいいですね。
計量を間違えないことはもちろん、こねの途中で粉っぽいからといって水分を足したり、甘くしたくて砂糖を多めにしたりしていませんか?これらはパン作りにはタブーです。
パンのレシピには「ベーカーズパーセント」という、パン職人さんが当たり前に使っている配合基準があります。
粉を100%として他の材料を何%入れるかという基準ですが、これをきちんと守ることにより安定した生地を作ることができるのです。
まずは材料をレシピ通りに重量で正しく計量し、自分のさじ加減で調整しない。これが鉄則です。
・「こね不足」
こね過ぎにはなりません。べたつくうちはとにかくこねて、そしてたたきましょう。
「え?こねてるんだけど」と思った方も多いかもしれませんね。
私も手ごねを始めた時、「まだなん?」と何度も思ったものです。よほどの上級者向けレシピでなければ、こね過ぎるということはまずないので思う存分こねてください。
パン作りでは、材料同士がなじんだら終わりではなく、こね続けることで以下の状態になります。
・粉に含まれるグルテンが膜を形成する
焼きあがったパンの断面には小さな気泡がいくつもありますよね。それは、グルテン膜の間にイースト菌が出したガスが入り込み、生地を持ち上げて膨らませているからなんです。
きめの細かいふんわりとした生地を作るには、よくこねてグルテン膜のきめをこまかく強くすることが重要です。
こね方は、下記の3STEPです。
ボウルの中でまずはかき回すように混ぜ、押しつぶすようにしてこねます。引きちぎるとグルテン膜が破れるのでまとめるように。根気よく続けるとだんだんとひとまとまりになってきます。
生地を持ち上げられるようになったら、台に叩きつけてみましょう。この時点では、手にべたべたとくっつく状態でOKです。不安になっても粉を足すのはグッとガマン。何度か叩きつけると、弾力が出て少しずつべたつきがおさまってくるのを感じられるでしょう。ここまでくるともう少し。
生地をまとめるとつるんとして、表面がなめらかでハリのある状態になればようやくこねあがりです。
・べたついてOK、余分な粉を足さない
・こねて、たたいて生地を鍛える
・裏ワザ 手っ取り早くニーダーやホームベーカリーのこね機能を使うと便利です
・「温度が高すぎる」
こねあがり時の生地の温度は、27~28℃にするのが理想です。温度が高すぎると油脂が溶けて生地が緩み、べたつきやすくなります。
また、この後の発酵でイースト菌が活動するのに適した温度を超えてしまうと、過発酵になる原因にも。
そのため、夏季は冷水を使うなどの工夫が必要です。
簡単な計算方法として、粉温と水温を足して28℃にすると覚えておくと良いでしょう。
生地がべたつく時は、上記の「計量のミスや調整」「こね不足」「温度が高すぎる」を参考に改善してみてくださいね!
2 発酵時に生地が膨らまない原因と対処法
「1.パンが膨らむ仕組みって?」で紹介したように、パン生地の発酵にはイースト菌の活動が大きく関わっています。
イースト菌がのびのびと活動しやすい環境下なら、生地はぐんと膨らみます。生地が膨らまない原因と良い発酵状態について、詳しくみていきましょう。
・「生地の温度が低い」
イースト菌が元気に活動する温度は約35℃です。
それよりも温度が低いと充分に活動することができず、生地を膨らませるためのガスを出せないため生地が膨らまないのです。
家庭用オーブンの発酵機能を使用する場合は設定しやすいですが、自分で設定する場合は、真夏なら常温、冬なら温かい場所を確保しましょう。
その際、必ずラップをかけるなど乾燥しないように注意してくださいね。
・「良い発酵状態」
40分間で2倍程度の大きさになるのが良い発酵状態です。
上記を守ったのにも関わらず、発酵が進まない、膨らまない場合、こねあがり時の生地の温度が低すぎた可能性が考えられます。
規定の時間が過ぎても膨らんでいないと感じる場合は、発酵温度を少し上げて35~38℃程度に設定し、気長に待ってみてください。発酵は緩やかに進みます。
イースト菌は約35℃が活動しやすい
40分間の発酵で2倍程度の大きさを目指す
こねあがり時の生地温度(適温28℃)もチェックしておく
・「イーストの入れ忘れ・弱っている」
イーストの入れ忘れに気が付いた場合、やり直しが可能です。発酵途中や、作るものが菓子パンや総菜パンなどの小型パン、食パンであれば気が付いた時点で即投入しましょう。
入れる際、ドライイーストの場合はごく少量の水で溶き(練るイメージ)生地になじみやすくするのがポイントです。投入したら、全体に混ざるまで再度こねて発酵をやり直します。
また、イースト菌は生きているので保管状態が良くなかったり古くなると弱ってしまいます。新品のイーストはアルミで真空状態に密封されていますよね。
温度と湿度が揃うとイースト菌の活動が始まってしまうのです。開封後はしっかりと密封し冷凍保管しましょう。
このように、発酵にはイースト菌の元気な活動が不可欠なため、イースト菌が好む環境を覚えれば、発酵時に膨らまないなんて失敗も回避できますよ。
3 生焼けになる原因と対処法
・中がつまり気味でねっちりとしている
・中の生地が完全に生
水分が多い、もしくは焼成が弱いのが多くの原因です。
生地材料をきちんと計量しても、具材などに水分が多く残っていると影響を受けます。
計量外の水分にも気を付けましょう。
また、オーブンの火力が弱いとレシピ通り焼いても、焼きが足りない状態になってしまいます。
自分のオーブンのクセを知って、温度や時間を調整しましょう。
「オーブンにはそれぞれの特性がある」
生焼けになる原因のひとつに、焼成温度が合っていないことがあります。
「レシピ通りの温度で焼いたのになぜ?」と思っちゃいますね。
家庭用オーブンは機種により出力の強さが異なります。また、庫内のヒーターやファンの位置の違いで対流の仕組みの違いによりムラができやすい場合もあります。
ですから同じ温度と時間で焼いても、使用しているオーブンによって焼き上がりの状態が違った結果、生焼けが起こるというわけです。
何度か焼いてみて、自分のオーブンのクセを把握して温度や時間を調整してみてください。
私は、実家のオーブンを使う時はレシピ通りに焼きますが、自宅で焼く時は10~20℃高め、時間を2~5分程度長めに設定して調整しています。
「焼成時、オーブンに一度に詰め込みすぎている」
一度にたくさん焼こうとして詰め込んでしまったということはありませんか。
ぎゅうぎゅうに詰めてしまうと、温風が全体に行き渡らず焼き加減にムラができてしまいます。
パンを焼くと、思った以上に膨らみますから、ゆったりと間隔をとって並べましょう。
また、焼成途中で天板の向きをかえると焼きムラを防げます。
「レシピ通りの予熱をしていない」
意外と忘れがちな「予熱」。予熱をして庫内を温めておかないと、レシピ通りの時間内ではしっかりと膨らまず、こんがりと焼き上がりません。
必ず予熱をしてから焼いてくださいね。生焼けの原因になります。また、予熱をしても生地をオーブンへ入れる際に扉を開けっぱなしにする時間が長いと、せっかく温めた庫内の温度がさがってしまいます。
オーブンへ入れる際は素早く行いましょう。予熱時のみ10℃程高く設定しておくのもひとつです。
側面がへこんだり、中がねっちりとしても完全な生でなければ食べられます。トーストするなどしてお手製のパンを楽しみ、早めに食べきりましょう。中が完全に生の場合、時間を置かず生地が熱いうちに再度オーブンに入れて焼き時間を延長することはできますが、同じ温度設定で焼き続けると表面が固くなる場合があります。10~20℃高めの温度設定でお試しください。大きなパンの場合、状態により形状が崩れるかもしれません。それも手作りならではの愛嬌だと思って楽しめば、味わいも格別ですよ。
・オーブンのクセを知り、温度と時間を調整する
・必ず予熱をする
・ぎゅうぎゅうに詰め込まない
少しのポイントに気を付ければ、そんな失敗もなくなるでしょう。水分量と焼成温度と時間の調整、そして予熱をして焼けばきっとうまくいくはずです。後の章に、リメイク方法も紹介しているのでそちらも参考にしてみてください。
4 焼き上がりがカチカチで固い時の原因と対処法
固くなるのは、こね不足や発酵不足、乾燥が原因であることが多いです。
カチカチのパンを作ってしまった。これもパン作りの初心者あるあるです。
私も初めてのパン作りで通った道ですから。イメージ写真とは全く異なる小さくてぎゅっと詰まったレーズンパンでした。
でも初めて焼いたパンは美味しく感じ、よく噛んで食べた思い出があります。
ですから、工程を見直すことから始めましょう。
・「こね不足・発酵不足」
前述で、きめの細かいふんわりとした生地を作るには、よくこねてグルテン膜のきめをこまかく強くすることが重要と説明しました。
こねて出来上がったグルテン膜の網目に、イースト菌が出すガスが入り込んで生地をふっくらと膨らませます。
これが発酵ですね。こねが足りないと、このグルテン膜が充分に形成されず、その結果ガスが入り込めないため、ふっくらと仕上げることができなくなるのです。
カチカチな固いパンで失敗しないよう、こねや発酵を焦らずしっかりとおこなうことが重要です。
・「乾燥」
生地の乾燥もしっとりやわらかいパンを焼けない原因になります。パン生地はとても乾燥しやすく、もたもたしていると乾燥が進むからです。
こね、発酵、成形、焼成のどのプロセスにおいても乾燥は注意が必要です。
ポイントとしては、以下に気を付けましょう。
・ボウルでの発酵ではラップをかけて乾燥を防ぐ
・成形中は、待機している生地に布巾などをかける
焼成時は、オーブンの火力が強いと表面が乾燥し、厚くなって固くなりやすいです。
そんな時は、生地の表面に卵を塗らず小麦粉をふりかける方法があります。
生地に直接熱があたるのを防いでくれるため、卵を塗るよりもふんわりと仕上がります。
また、焼きあがったパンも特に小型のものは、長時間置いておくと乾燥が進みます。粗熱をとったら早めにポリ袋などに入れて保管することをおすすめします。
そうすれば翌日もしっとりやわらかなパンを味わえますよ。
・根気よくこねる
・しっかりと発酵を見極める(見た目の目安は40分で約2倍の大きさ)
・乾燥から生地を守る
こね不足、発酵不足、乾燥も、仕組みを理解し少し気を付ければ防ぐことができます。
固いパンが出来てしまった場合は、工程を見直してみてくださいね。
失敗したパンをリメイク!
ここまででよくある失敗とその原因、対処法をお伝えしてきましたが、残念ながら対処法でもリカバリできない場合、思い切って別のものにアレンジしてしまいましょう。
せっかく作り進めた生地、うまく活用したいですよね。
膨らませなくて良いピザ生地として活用するのが簡単でおすすめです。
・生地
・ピザソース(ケチャップ、カレーソースもOK)
・お好みの具材
・とけるチーズ
・オリーブオイル
生地を天板にのるサイズにめん棒で薄くのばします。丸でも四角でもOKです。ピザソースを全体に広げ、お好みの具材をのせます。さらにとけるチーズをかけたらオリーブオイルを回しかけます。予熱をしたオーブン250℃で約15分間焼いてください。
卵と牛乳を使って、スイーツ系とおかず系の2種、どちらでも。
・卵 1個
・牛乳 100cc
・砂糖 大さじ1
・バター
※パンの量によって上記の配合で加減してください。
卵、牛乳、砂糖を混ぜ合わせ、お好みのサイズに切ったパンを漬けます。この状態で電子レンジで約1分加熱すると早くしみこみます。
よくしみたらフライパンにバターをしいてこんがりと焼きます。
・卵 1個
・牛乳 100cc
・粉チーズ(あれば)
・塩こしょう
・お好みの具材(ハムや玉ねぎ、芋、きのこなど水分の少ないもの)
・とけるチーズ
卵、牛乳、粉チーズ、塩こしょうを混ぜ合わせ、一口大に切ったパンを漬けます。お好みの具材を炒めてオーブン調理可能な器に入れ、卵液ごとパンも流し入れたら、とけるチーズをかけてオーブントースターでこんがりするまで焼きます。
もし、失敗した!と思っても、慌てず状態を確認しリカバリできるようなら対処し、思い切って別のものに作り替えてしまうというのもアイデアのひとつです。
作り替える工程も楽しんでみてくださいね。
まとめ
挑戦には失敗がつきもの。この記事では、パンが膨らむ仕組み、よくある失敗4例と原因、対処法、リメイク案を紹介しました。よくある失敗は下記の4例です。
計量ミスや調整、こね不足、温度が高すぎないか確認
生地の温度が適温か確認
水分量の確認、オーブンの特性を掴む
こね不足・発酵不足、乾燥していないか確認
失敗かと思ったら、もっとこねれば良いだけで失敗じゃなかったなど、見極めができるようになれば正しい判断ができます。
それにどの失敗も、少しのポイントに気を付ければうまくいくものばかり。
パン作りは時間がかかりますが、ゆったりと生地と向き合って回数を重ねてみてください。そのうち、触った感触や温度による生地の状態の違いなども感じられるようになると、もっとパン作りが楽しくなりますよ。
コメント